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「昔は都心の注文住宅に憧れてたのよねえ」彼女は自分の終の住処をゆっくりと見渡す。
ここは西東京の山奥の田舎、家は中古で買った古い木造住宅だ。
古くて色褪せていた古屋を、彼女はゆっくりと変えて行った。
ペンキを塗り、釘を打ち、自分で壁紙を貼った。
業者の手を借りた部分もあったけれど、荒れ果てた古屋を趣のある家に変えたのは彼女だった。
「家はコンパクトなんだけど、デッキと縁側があって畑がやれる広さの庭が魅力的だったのよ」確かに。
広いリビングに面して縁側が、寝室に面してデッキが連なっている。
これは彼女の希望で設置されたもの。
林に続く入り口にある彼女の古屋は別荘のようにも見え、林のグリーンに抱かれているようにも見えた。
正直、都会の注文住宅ではこの味わいは出せなかっただろう。
それ位素敵だし、気に入ってしまったのだ。
西東京の田舎の庭をいじるのはこれから、実のなる樹木を植えたいわと彼女。
「でも1人じゃ淋しくない?」とうとう聞いてしまった。
彼女はずっとシングル、バリバリ仕事をこなし、この後は少しゆったりとした空気の中で生きていきたいのだという。
彼女は笑い、開け放したドア、縁側に目をやる。
「それがねぇ」、いつの間にか縁側に猫がいた。
我々と目が合っても動じず、外を眺めている。
「気が付いたら、そこにいた」その猫はココアという名前をもらい、彼女のパートナーとなったのだという。
小皿にカリカリを盛り付け、ココアの前に差し出すと、頭を擦りつけたココアが控え目に食べ始めた。
「仕事はパソコンで出来るし、近々リフォームの仕事も始まるのよ」「リフォームの仕事?」頷く彼女。
「この家の様子を見ていた近所の人たちが、教えて欲しいと言うものだから。
ブログにも載せてみようと思って」。
彼女は結局、自分の人生を楽しんでいるんだな。
仕事も家も、素敵なパートナーも西東京にいる彼女の手中にある。
そんな彼女が少し輝いて見えた。