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西東京にある便利屋のつぶやき「こんなことまでお願いしてしまって、ごめんなさいね」、そのご婦人が済まなそうに言った。
物置の中の整理と不要品の買取&処分。
整理していた物置の棚がぐらついており、ついでに棚の補強も行ったのだ。
物置と言っても小さな蔵程度の広さがあり、まだ使える自転車やらギターやらが仕舞い込まれていた。
この蔵の中をスッキリ空けたいのだと言う。
共にきちんとメンテナンスされた様子が窺え、本当に処分してしまって良いのか再確認したくなる。
現在はともかく、大切に使われていたことに間違いはないからだ。
最初に確認した時、ご婦人は迷いなく答えたものだ、「もう使うことはないので」。
でも何だか気にかかる。
もしも一時の感情で処分しようとしているのなら、後で後悔することもあるからだ。
不要品として引き取った荷物の査定に取りかかる。
自転車もギターも処分ではなく買取価格だ。
その明細に目を通していたご婦人が顔を上げ、呟く。
「これは、次に誰かの役にたつかもしれないということでしょうか?」「そうです」と私。
「嬉しいわ」とご婦人。
「ここに置いていても、誰の役にたつわけでもないもの」。
お客様が自身で話すのではない限り、私たちがこうしたことを深く追求することはない。
どんな事情があるのか分からないからだ。
ギアチェンジするタイプの自転車、アコースティックギター。
どちらかと言えば、男性の物という感じがする。
ギターを背に抱え、自転車を駆る学生の姿が思い浮かんでくる。
学生時代に一度は罹る、麻疹のようなもの。
代金を精算して、私は車に向かう。
結局、自転車とギターの由来は不明なままだ。
開けたスペースに何を入れたいのかも。
それに彼らにとって重要なのは、「どこから来たか」ではなく、「どこへ行くのか」だ。
自分に喜びを見出してくれる誰かの元で、再び輝くために今は西東京にいるのだから。